研究開発本部 海老原樹
はじめに
みなさんこんちには、シャープ研究開発本部の海老原と申します。2025年の1月ももう終ろうとしていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
さて、私はこの1月、アメリカで開催された世界最大のテックイベント「CES2025」に参加してきました!毎年、次世代のテクノロジーが集結するこのイベントですが、今年も、4,500社を超える企業がAIを軸とした製品やサービスを展示しました。気になる企業の展示場所を探すだけでも一苦労!
CESの報告としては少し時期が遅れ気味ですが、自分の製品開発と関連が深い分野のトレンドを皆さんとシェアしたいと思います。
シャープでは、エッジ技術を活用した、人に寄り添った対話システムの開発を行っています。私もその中で、ウェアラブルデバイスを用いた対話システムの開発に携わっているので、今回はCESを、AIエージェント・ウェアラブルデバイスという観点で振り返りたいと思います。
大企業がAIエージェントをサービス化
生活に密着したAIの「パートナー」にもうすぐ会えます。
AIエージェントとは、ユーザーが設定した課題を自律的に解決するAIのシステムのことです。最近は、「2025年はAIエージェント元年である」という記事をネットで見かけます。
実際に、CESでは、AIエージェントを複数の大企業がサービス化することを発表しました。その中には2025年にサービスを開始するものもあります。来てます、AIエージェントの波!
以下に3つ例をご紹介します。
家庭のウェルネスコーチ「Umi」(Panasonic)
Panasonicのアプリサービス「Umi」は、パーソナライズされた家庭のウェルネスコーチです。Anthropicの大規模言語モデル「Claude」をベースとしたAIエージェントと対話形式で家庭のウェルネス上の問題などを相談できます。
家族みんなで一緒にいる時間を増やしたり、健康のために家族みんなの運動量を増やしたりなどの目標のために、「Umi」は具体的な日課や行動計画を提案し、健康的な習慣づくりをサポートします。
CESのブースでは選択肢をタップする形式で、「Umi」のデモを体験することができました。
私が設定した、「アクティビティを通して家族とのつながりを深めたい」という課題に対し、「Umi」とやりとりをして、最終的に提案してくれた日課。Umiは2025年にアメリカでサービスが開始される予定とのことです。
対話型パーソナルエージェント搭載の新型電気自動車「AFEELA 1 」(ソニー・ホンダモビリティ)
ソニー・ホンダモビリティは新型電気自動車の「AFEELA 1 」を発表しました。「AFEELA 1」には対話型パーソナルエージェントである「AFEELA Personal Agent」が搭載され、自然な対話を通じて様々な車載機能を音声でコントロールできる他、エージェントとの会話を楽しんだり、行動計画の提案を受けたりすることもできます。
下のコンセプト動画では、「AFEELA Personal Agent」のほうから人に挨拶をし、ユーザーの習慣を考慮して経路の提案を行っています。
「AFEELA」は
「人とモビリティの関係を再定義する」ことをコンセプトとしていて
、人のように対話でやり取りできる車は、まさに相棒のような存在になりそうですね。
AFEELA 1は2026年中旬の納車開始を予定しているそうです。
Google TV への「Gemini」導入(Google)
(AIエージェントではないかもしれませんが、上の2つと共通点が多いので、ここでご紹介します。)
Googleは、大規模言語モデル「Gemini」を統合したテレビプラットフォーム「Google TV」のプレビューを公開しました。対話形式でTVを直感的に操作できるようになり、旅行や健康、宇宙、歴史などに関する質問をすると、動画を交えて回答してくれます。
この機能は2025 年後半から、一部の「Google TV」にて提供予定とのことです。
上の3つのAIエージェントのサービスは以下のような共通点があります。
ユーザーと自然な会話でやり取りする
生活に密着したデバイスに搭載され、ユーザーに高い頻度で、長期間(年単位で)利用される
高度にパーソナライズされる
まさに、AIの「パートナー」とも呼べる存在ですね。AIエージェントは人の生活に自然な形で統合され、単なるツール以上に、頼もしい存在になりそうです。
これらのAIエージェントのサービスは、早いものだと2025年にサービスを開始しますが、どれだけの人に使われ、どのように人の生活に影響を与えるのか、注目していきたいです。
高度なAIアシスタント機能を持つ音声対話型のウェアラブルデバイスが2025年に市場へ
AIと対話できるウェアラブルデバイスはどれもスタイリッシュ!
昨年は「
」が話題を呼びましたが、今年も複数のAIウェアラブルデバイスが登場します。
以下に3つ例をご紹介します。
視界を遮らない独自のディスプレイ搭載のHalliday スマートグラス(Halliday)
HallidayのAIスマートグラスは、独自開発の「Digi Window」ディスプレイと能動的なAIアシスタント機能が特徴です。
「Digi Window」と名付けられたディスプレイは、メガネのフレーム上部の小さな光学モジュールをのぞき込むことで、3.5インチ相当のスクリーンを見ることができます。視界を遮らない設計なのはいいですね。
メガネ上部の丸い部分がディスプレイの光学モジュール。ここをのぞき込むとディスプレイが見える。さらに驚いたのは、視力の悪い自分でも、裸眼でディスプレイの文字がはっきり見えたことでした。視力に関係なくディスプレイの情報を確認できるそうです。
AIアシスタント機能は、GPTなどのLLMと連携し、内蔵マイクで会話を聞き取り、ユーザーのニーズを予測し、指示される前に先回りして能動的にサポート提供します。残念ながら、CESのブースでは通信環境が悪い影響でデモをみることはできませんでした。
カメラは搭載されていないものの、35gと非常に軽量です。
らしいので、普通のメガネと変わらないですね!
本体価格が$489で、今年3月に発売を予定しているとのことです。
カメラ・ディスプレイ搭載の軽量スマートグラス「Rokid Glass」(Rokid)
Rokidは昨年発表された「Rokid Glasses」の実機デモを実施っしていました。このスマートグラスはディスプレイとカメラを搭載しながらも軽量(49g)でスタイリッシュな設計です。
↓
より、「Rokid Glasses」のコンセプト動画
Rokid Glasses, your first smart glasses that let you take photos, make calls, listen to music, and chat with AI. Visit our booth at CES to experience it firsthand!🤟🤟🤟 #Rokid #Smartglasses #CES2025 #RokidGlasses
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アリババのLLM「通義千問(Tongyi Qianwen)」と連携し、メッセージへのインスタントリプライ、ナビゲーション、レストランなどの予約、リアルタイムの物体認識、食品のカロリー推定などが可能です。
高度な声紋認識技術を活用したAlipay(※)での決済機能も実装しています。スマホを取り出さずにハンズフリーでQRコード決済できるのは、カメラが付いているスマートグラスならではですね。
私がブースへ行ったときは体験できませんでしたが、CESではリアルタイム翻訳のデモを行っていたようです(参考リンク:
)。
「Rokid Glasses」は2025年前半に発売予定とのことです。
(※アリペイ/支付宝、アリババグループ提供の中国通貨「人民元」でのQRコード決済サービス)
脳波で起動するAIウェアラブルデバイス「Omi」(Based Hardware)
サンフランシスコのスタートアップBased HardwareがAIウェアラブルデバイスの「Omi」を発表しました。「Omi」は周囲の会話を聞き取ってユーザーの状況を把握し、GPT-4oと連携して情報やサポートを提供します。
「Omi」の特徴はこれです。
こめかみに装着した「Omi」。(出典:
よりキャプチャ)未来感ある装着の仕方ですよね。「Omi」は脳インタフェースを持ち、デバイスを頭に装着することで、デバイスに意識を向けて起動させることができます。脳波をつかわずにネックレスのように装着することもできます。その場合は、「Hey, Omi!」と話しかけることで起動します。
もう一つの特徴として、ソフトがオープンソースで開発されており、すでに250以上のサードパーティアプリが開発されています。オープンソースであるため、会話情報などのデータの流れの透明性が高いです。
「Omi」は開発者向けのキットはすでに配布していますが、一般消費者向けの製品版は、2025年の前半に発売予定とのことです。
AIと対話ができるウェアラブルデバイスは、2025年にどんどんでてきそうですね。
ここまで紹介したAIウェアラブルデバイスは、どれも軽量さを重視しており、それゆえに多くの処理をクラウドで行っています。そのため、通信環境が悪いCES会場では、(上記の製品に限らず、)高度なAIアシスタント機能をデモできない展示が多かったです。
一方で、翻訳や文字おこしなどの比較的軽量な処理の場合、デバイスはスマホと接続し、スマホ上でAI処理を行うことで、オフラインで動作する製品もありました(「Rokid Glasses」のリアルタイム翻訳はその例です)。ただし、普段の生活では通信環境が悪い場所にいる時間のほうが少ないですし、そこまで困ることではないのかもしれません。
おわりに
生活に密着したAIエージェントを活用したサービスや、AIと対話できるウェアラブルデバイスの登場によって、今年はAIと人との距離がぐっと縮まりそうですね。
また、ウェアラブルデバイスにおいては、クラウドベースの処理に加えて、ある程度のAI処理がエッジ側(デバイス側)でも行えると、使いやすいデバイスになると感じました。
例えば「Rokid Glasses」はそのいい例でした。オフラインでもエッジ側(スマホ)でリアルタイム翻訳ができるし、インターネット接続できればAIと対話してもっと高度な処理が行えます。
例え同じ機能でも、クラウドでの処理とエッジの処理の両方の選択肢を持っていると、制限はありつつも場所を選ばずに使うことができます。インターネット接続したら高精度に、オフラインだと中品質で処理を行う、というイメージです。ウェアラブルデバイスは身に着けて移動することが前提ですし、どこでも使えるというのはそれだけでうれしいですよね。
ウェアラブルデバイスとスマホとの関係性や「Omi」のようなオープンソースのソフトの開発方針は、勉強になる点が多かったです。我々の開発にもこの知見を活かしたいと思います。
参考文献
Halliday: World's 1st Proactive AI Glasses with Invisible Display